カメラ | OLYMPUS TG-6 |
レンズ | 本体ズームレンズ (デジタルテレコン使用) |
ライト | リングライト |
フラッシュ補正 | 発光禁止 |
撮影モード | Pモード(プログラムオート) |
F(絞り値) | 4.9 |
シャッター速度 | 1/160 |
露出補正 | 0.0 |
ISO(ISO感度) | 100 |
撮影地 | 慶良間 |
ダイビングでの水中写真撮影のシーンで、現在最もポピュラーな機種と言ってもいいOLYMPUS TGシリーズ。
ダイビングの妨げにならないコンパクトなボディに水没知らずの防水性能に加えて、水中での撮影シーン別に設定された水中撮影専用の撮影モードや水中ホワイトバランスといった、従来のコンパクトデジカメにはない高機能を兼ね備えた、水中写真ビギナーから中級者までをカバーする名機です。
今回は、このTGシリーズのうちの現行機種であるTG-6の機能の一つ『デジタルテレコン』の使い方をご紹介します。
(1)デジタルテレコンを使うと被写体をさらに大きく撮影できる
TG-6のデジタルテレコンとは、被写体を使用しているレンズの倍率以上の大きさに拡大して、中央部を切り出して画像ファイルとして保存する機能です。
画像処理エンジンでデジタル補間、出力し被写体が約 2 倍の大きさになります。
簡単に言うと、『撮りたい被写体の大きさが2倍になる』と言うことができます。
『被写体が小さくて、ズームをテレ側いっぱいにしても大きく撮れずに物足りない』
『近くに寄ると逃げてしまうので、大きく撮れない』
と言った、特にマクロ撮影シーンで効果的です。
(2)デジタルテレコンを使うためのモード設定の仕方
『撮りたい被写体の大きさが2倍になる』、『マクロ撮影シーンで効果的』と言うことで、思い浮かぶのが『水中マクロモード』と『水中顕微鏡モード』です。
しかし、残念ながら水中マクロモードや水中顕微鏡モードといった『水中モード』ではデジタルテレコンを使うことができません。
デジタルテレコンを使うことができるのは『Pモード(プログラムオート)』と『Aモード(絞り優先オート)』になります。
PモードまたはAモードを選択し、撮影モードになっている状態で、十字ボタンの左(◀︎印ボタン)を押すと、画面の中央上部にデジタルテレコンがONになっているマークが表示され、被写体が2倍に拡大されます。
たったこれだけ、簡単です。
ただ、PモードまたはAモードは、主に陸上撮影にて使用されることを想定して設定された撮影モードであるため、幾つかの設定を水中撮影に適したものに変更した方がより良い撮影ができます。
使いやすいのはPモードだと思いますので、Pモードでの設定の変更点を以下に記載します。
撮影モード:Pモード
仕上がり:水中
WB(ホワイトバランス):水中WB2
ISO感度:AUTO
フラッシュ:発光
フラッシュに関しては、水中ライトやリングライトを使用される場合は発光禁止にして下さい。
日頃から陸上でPモードを使った撮影を行うという方は、この水中用の設定をカスタムに記憶させておくと良いでしょう。TG-6では、C1、C2の2つに登録できるのでどちらかに登録してみて下さい。
(3)デジタルテレコンを使ったマクロ撮影
では、実際にデジタルテレコンのON/OFFを切り替えて撮影した写真をご覧下さい。
デジタルテレコンをOFFにして撮影したウルトラマンホヤ(ヘンゲボヤの一種)
上は、ウルトラマンホヤの写真をデジタルテレコンを使わずにできるだけ大きく撮影した写真です。
今回、リングライトを使って撮影していますので、これ以上カメラを近づけるとリングライトがホヤに当たってしまい、この大きさでの撮影が限界となります。
上の写真は、デジタルテレコンを使って同じウルトラマンホヤを撮影した写真です。
カメラとホヤの距離は変わりませんが、2倍の大きさで撮影でき、ホヤの造形の面白さが伝わる写真になりました。
デジタルテレコンOFFで撮影したイソギンチャクモエビ
上の写真は、イソギンチャクモエビをデジタルテレコンを使わずに撮影した写真です。
岩とサンゴの間にいたので、カメラ本体が引っかかってこれ以上カメラを被写体に近づけることができない環境でした。
主役のイソギンチャクモエビが小さく、主題がはっきりしない写真になっています。
上の写真は、イソギンチャクモエビをデジタルテレコンを使って撮影した写真です。
イソギンチャクモエビを大きく撮影することで主役の存在感が伝わってくる写真になりました。
デジタルテレコンOFFで撮影したジョーフィッシュ
上の写真は、デジタルテレコンを使わずに撮影したジョーフィッシュ(アゴアマダイ)の写真です。
驚かさないよう慎重に接近しましたが、これ以上近くに寄ると穴に隠れようとするので、これ以上大きく撮ることが難しい状況でした。
写真としては、周りの生息環境がわかる構図で悪いわけではないですが、もう少し大きく撮りたいところです。
上の写真は、デジタルテレコンを使って撮影したジョーフィッシュ(アゴアマダイ)の写真です。
構図の大部分をジョーフィッシュで埋めることができ、迫力ある写真になりました。
上の写真は、デジタルテレコンを使わずにアカメハゼを撮影した写真です。
とても小さいハゼなので、もう少し大きく撮りたいところですが、カメラを近づけていくと逃げてしまいました。
上の写真は、デジタルテレコンを使って撮影したアカメハゼです。アカメハゼが逃げていかない距離から大きく撮影することができました。
(4)デジタルテレコンを使う際の注意点
デジタルテレコンは、ボタンひとつで被写体を大きく撮影できる優れた機能ですが、注意すべき点があります。
① 電子的ズームであるため、やや画質が落ちる(ただし、画像編集による単純なトリミングよりはかなり画質が良い)
前述の通り、デジタルテレコンとは、被写体を使用しているレンズの倍率以上の大きさに拡大して、中央部を切り出して画像ファイルとして保存する機能で、画像処理エンジンでデジタル補間、出力し被写体が約 2 倍の大きさに撮影できる機能です。
一方で、PCやスマートフォンといったデバイスに移して画像編集ソフトでトリミングすれば、同じ2倍に拡大した画像にできます。
しかし、2倍に拡大するということは、画像面積が1/4になるということなので、データ量が1/4になる計算になります。
つまり、トリミングするとデータ量も小さくなり画質が劣化してしまうという問題が起こります。
デジタルテレコンでは、拡大したのち画像処理エンジンによって小さくなったデータを補間するので、画質の劣化を抑えてくれます。
単純にトリミングで2倍に拡大した画像より画質が良いところがデジタルテレコンの優秀なところです。
実際、今回掲載している写真においても、データ量はJPEG形式で約8割に小さくなる程度で済んでいます。
とはいえ、画質がやや落ちるということは知った上で上手に扱っていただけたらと思います。
また、トリミングに用いた画像編集ソフトの補間能力がTGシリーズの画像処理エンジンより高い場合は、そのソフトでトリミングした方が画質が良くなることも考えられます。
② 最短撮影距離がある
前述の通り、デジタルテレコンを使えるモードはPモードとAモードになります。
PモードとAモードでめいっぱいズームをテレ側にした時、ピントを合わせることができる被写体との距離の限界、つまり最短撮影距離は、水中でおよそ15〜20c mほどです。これ以上近くで撮影することができません。
一方で、水中顕微鏡モードではハウジングのポートレンズ面からピントを合わせることができます。
つまり、被写体に充分に接近することができる状況においては、PモードやAモードでデジタルテレコンを使うより、水中顕微鏡モードでしっかりカメラを近づけて撮影した方が大きく撮れることがあるということです。
カメラを充分被写体に近づけることができる時は水中顕微鏡モードを使い、被写体のまわりの岩やサンゴによってカメラを近づけるのが難しい状況や、被写体が臆病な性格でカメラを近づけると逃げてしまうような場合はデジタルテレコンを使うといった使い分けが大切と言えます。
ワンポイントアドバイス
TG-6の『デジタルテレコン』を使った撮影をする場合は、次のことに注意しましょう。
- デジタルテレコンを使うと被写体をさらに大きく撮影できる
- デジタルテレコンを使うためのモードをしっかり設定する
- 撮影環境や被写体によって、水中顕微鏡モードと使い分ける
- 電子的ズームであるため、やや画質が落ちる(ただし、画像編集による単純なトリミングよりはかなり画質が良い)
- 最短撮影距離を確認する